忌み言葉とお悔やみの言葉の知識
忌み言葉とは、冠婚葬祭の場において使用を控えた方が良いとされる言葉で読み方によっては縁起が良くない事を連想させる言葉なども含まれています。葬儀や法事などに参列する際や弔辞や弔電を送る時だけではなくお悔やみの言葉を伝える際にも、マナーとして確認しておきましょう。また、宗教や宗派によって死に対する考え方が異なるので忌み言葉が変わる場合もあります。
今回の記事では、忌み言葉とお悔やみの言葉の知識を詳しくお伝え致します。
忌み言葉とは
「重ね言葉」や「死を直接連想させる言葉」があります。重ね言葉とは、意味を強める為に同じ言葉や同じ意味の言葉を重ねて使用した言葉を指します。重ね言葉だけでなく続く事が連想される言葉も同様に不幸が繰り返し重なるといった様に縁起の良くない出来事や不幸な出来事に繋がるとして葬儀の場では特に忌み言葉とされています。日常ではよく口にする言葉が多いので意図せず口にしてしまう事も多いので注意が必要です。例としては「重ねて」「重ね重ね」「重々」「くれぐれ」「次々」「度々」「日々」「益々」「いよいよ」「色々」「再び」「繰り返す」「もう一度」などが挙げられます。
また、死を直接連想させる言葉は勿論のことですが生を直接表す言葉も葬儀の場では忌み言葉となりますので避けるようにします。「死ぬ」「死亡」「生きる」「生存」だけではなく、数字の「四」は死、「九」は苦を意味し、「消える」なども命が消えてなくなるということを連想させるので避けましょう。それに伴い「苦しい」「辛い」「迷う」「うかばれない」「大変」「落ちる」「追って」「続いて」「引き続き」「また」「次に」という言葉もマイナスな表現となりますので注意が必要です。余談ですが、驚きを表現しようと「とんでもないこと」と口にしてしまうのはやってはいけない事だと思われる場合もありますのでやめましょう。
宗教ごとの忌み言葉
キリスト教では、故人が神や仏になるという考え方はなくプロテスタントの場合は「召天」、カトリックの場合は「帰天」と言い死者は神に召されるという考え方が基本にあるので、拝礼をするのも故人に対してではなく神に向かって捧げています。その為「お悔やみ」など一般的な仏教の葬儀で使う言葉は避けた方が良いでしょう。キリスト教の葬儀では「安らかなお眠りをお祈りします。」や「〇〇様の平安をお祈りいたします。」などの表現が良いとされています。
神道では、故人は命(みこと)として考える為、家の守護神として先祖の神々と一緒に祀っています。葬儀の際に「供養」「冥福」「成仏」という言葉は仏教用語なので避けましょう。お葬式は通夜祭や葬場祭と呼ばれ、遺族へ挨拶する際には「御霊のご平安をお祈りします。」等の表現を使うと良いとされています。
仏教では、死後49日間は冥途を彷徨うとされていますので、冥福を祈ると事はその旅が無事に終了してあの世へ到着する事を願うという意味もあります。その為、葬儀の場でよく耳にする「ご冥福をお祈り申し上げます」という言葉は、仏教用語なので他の宗教では使う事が出来ません。冥福とは死後の幸福を祈るために仏事に修するという意味があり、死後の世界でも安心して暮らせるようにという気持ちを込めた仏教の言葉です。また、ここで注意が必要なのが同じ仏教でも浄土真宗の様に冥途という考えがない場合には冥福を祈るという言葉はマナー違反になります。浄土真宗の場合は「哀悼の意を表します」という表現が良いでしょう。
忌み言葉の言い換え
忌み言葉はマナー違反となるだけではなく、ご遺族の方達の悲しみを更に増やすものです。苦痛を少しでも和らげるために柔軟に言い換えたり丁寧な表現に置き換える必要があります。
- 忌み言葉の言い換え
- 「重ねて」「重ね重ね」→「加えて」「深く」
- 「重々」「くれぐれ」→「十分に」「よく」
- 「次々」→「たくさん」
- 「度々」→「よく」
- 「益々」「いよいよ」→「さらに」「もっと」
- 「色々」→「多くの」「多彩な」
- 「再び」→「いま一度」
- 「繰り返す」→「振り返り」
- 「追って」「続いて」→「後ほど」「同様に」
- 「引き続き」「また」→「これからも」「さらに」
- 「次に」→「その後」「新たに」「別の機会に」
- 「死ぬ」→「亡くなる」
- 「死亡」→「ご逝去」「他界」
- 「生きる」「生存」→「ご生前」「お元気でいらしたころ」
などが挙げられます。日常で使用する何気ない表現が葬儀の場では忌み嫌われる場合もありますので、こうした言い換えを意識しするようにすると良いでしょう。
お悔やみの言葉について
「ご愁傷さまです」の意味と使い方
「愁傷」の「愁」とは憂いの気持ちを表し「傷」とは強い悲しみを表します。それが合わさった「愁傷」は、強い悲しみを憂えるという事であり、「ご愁傷さまです」は遺族に対して同情や慰めの気持ちを含んでいる為、通夜や葬儀の場で述べるお悔やみの言葉として代表的です。また、ご愁傷さまという言葉には「御」と「様」の最上の敬意を示す表現であり、敬語表現でもある為、ビジネスシーンや目上の方に対し使用されます。また時に日常で嫌味や煽る意味で使用される事もあり、その皮肉めいた意味合いに嫌悪感を示す方もいますので言葉をかける相手やその場の雰囲気やタイミングなどをよく考える必要があります。また「ご愁傷さまです」を使用する際に注意したい点として、口頭でのみ使用可能な言葉ですので、文面で使うのは不適切となるので注意してください。
「お悔やみ申し上げます」の意味と使い方
「お悔やみ」とは人の死を弔う言葉です。「お悔やみ申し上げます」は、「故人の死を悲しみ、弔いの言葉を申し上げます」という意味になります。遺族と話す際に使う場合は、「この度は心よりお悔やみ申し上げます」と言うのが代表的です。また「ご愁傷さまです」と併用して「この度はご愁傷さまです。心よりお悔やみ申し上げます」と伝えても良いでしょう。「お悔やみ申し上げます」は口頭でも文面のどちらにおいても使用可能な言葉です。文中では、「ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます」や「突然の悲報に接し、心からお悔やみ申し上げます」などの使い方が代表的です。
お伝えするタイミングや場所
お悔やみの言葉をお伝えするタイミングや場所により添える言葉が変わりますので注意しましょう。葬儀の受付では基本的なお悔やみの言葉に続けて「お参りさせていただきます」や仏式なら「ご焼香をさせていただきます」といった言葉を添えます。通夜で通夜ぶるまいに呼ばれ退席する際には受付で「おもてなしに預かりました。今日はこれで失礼致します」と添えます。葬儀に参列できず後日、喪家を訪ねる場合はお悔やみの言葉の後に、参列できなかった事を詫びる言葉である「ご葬儀に伺えず、失礼をお許し下さい」を添えます。その上でお参りさせて頂きたい事を伝えます。
ご家族のご逝去に際し、ご遺族は深い悲しみを感じていらっしゃいます。お悔やみの言葉を述べる際は、悲しみにくれる遺族の気持ちに寄り添い、故人様を悼む気持ちを込めながら短めに伝えるようにします。故人と親交が深かった場合は想いが溢れ様々な事を伝えたくなるかもしれませんが、ご遺族の負担を増やさない様に配慮する事が大切です。声のトーンは抑え、小さめの声で挨拶するのが基本です。死因や故人の年齢によりお悔やみの言葉を変える場合もありますが、こちらから死因を尋ねるのは控えましょう。その場に適した正しい言葉を選択し、故人や遺族に対して嫌悪感や不快な想いをさせない様に振る舞う事が大切です。