事前相談と葬儀式場の知識
葬儀の準備をしていないと流れに身を任せて葬儀を行ってしまう可能性も想定されます。満足できるお見送りをする為にも今一度葬儀の事前相談について理解を深めましょう。また、葬儀を執り行う場所には自宅や葬儀社、お寺、ホールなど様々な種類があります。こうした葬儀式場には、費用や設備などに違いがありますのでそれぞれの特徴を踏まえ自身の状況や故人の希望に合わせて選んでいかなければなりません。
今回の記事では、事前相談と葬儀式場の知識を詳しくお伝え致します。
葬儀事前相談の知識
過去に喪主、または喪主に近い立場で葬儀を経験した方の中でも、故人がお亡くなりになる前から葬儀社を決めていたという方に葬儀社を選び始めた時期について調査した統計では、生前から葬儀社を決めていた方の3割以上が、お亡くなりになる1年以上も前から葬儀社を探していたという結果が出ています。次いで半年から1年未満という回答をした方も3割ほどという結果が出ており、実に合わせて6割以上の方が半年以上は前から葬儀社を決めていたということです。
大切な方が亡くなられた際に葬儀業者に依頼するごく一般的なタイミングは、臨終を迎えた際に直面する遺体の搬送のタイミングです。病院で亡くなられた場合には、医師による死亡診断やスタッフによるご遺体処理の後、病院内に設置されている霊安室に運ばれます。ですが、病院内の霊安室に安置できる時間は概ね3時間程度と限られています。ですから、この限られた短時間の間に、故人を病院から自宅または安置施設などに移す必要があります。この時の搬送は葬儀業者に依頼をするのが一般的です。病院には提携している葬儀社のスタッフが居ることが多く、ご臨終後に病院側から「葬儀社を紹介することも可能」という旨の説明を受けることが通例です。また、自宅で亡くなった場合もその後の葬儀の準備のため葬祭業者に連絡します。かかりつけ医などがある場合には医師によって死亡診断書を書いてもらいますが、死因を確定するために検死が必要となる場合もあります。検死が済んだ遺体の搬送は遺族に任されますがこの際も葬儀業者に依頼するのが一般的です。いずれの場合も、大切な方の逝去という辛い状況下で短時間のうちに安置場所を決めて速やかに搬送する必要がある為、何もわからないまま流れるように葬儀の準備に奔走したと語る方も少なくはありません。そんな時に、遺族の気持ちに寄り添って故人に礼を尽くし故人を送る仕度を調えるのが葬儀業者です。いざというときに慌てずより理想に近い最期のお見送りをする為にも、信頼できる葬儀業者をあらかじめ決めておくことで安心して葬儀の準備をすることができるでしょう。
ここからは事前準備・事前相談のメリットについて再度お伝えいたします。
- 金銭面のメリット
- ご存知の通り葬儀にはある程度の費用がかかります。ですが実際に「どの様な葬儀でいくらかかる」という点までは知っている方はそう多くはありません。
- 大切な方を失ったショックの最中では、冷静な判断や審議ができないまま葬儀の形式を選んでしまうことも起こり得ます。後日、請求書を見て「こんなにかかるとは」「こうしていれば良かった」と後悔する方も実際にいらっしゃるようです。事前に葬儀の準備をしておけば、冷静な状態で各社の各プランを比較検討し、葬儀費用の相場感や「どの様な葬儀でいくらかかる」のかをある程度見極められるようになります。
- 葬儀や人の死にまつわるお金のことを把握しておけば、あらかじめ必要なお金を確保しておくことも可能です。反対に、予算に合わせて葬儀の内容を決めていくことも可能です。
- お金に関する不安がなくなれば、精神的なゆとりも生まれます。ゆとりが生まれた分だけ、心を込めてしっかりと故人を見送ることができるでしょう。
- 希望にあった葬儀
- 葬儀に際して「なんとなく・おすすめしてくれたから」と流されるように葬儀の内容を選ぶ方がいらっしゃいます。しかし、それぞれの希望や思いを反映させた方がより高い満足感を得られる葬儀になるはずです。
- 流れに任せて葬儀の内容を決めてしまった場合、後悔が残る可能性が高くなります。現実的に誰かが亡くなった後は精神的にも動揺していることが通常ですし、故人も意見をいうことが出来ません。故人や遺族の思いを最大限に反映させた内容を考えるのは難しいことです。ですから、亡くなる前に葬儀の事前準備をしておけば、満足できるように葬儀の内容を決めることができます。遺族は故人の希望を叶えるために具体的な行動をとることもできます。
- 相談相手の確保
- 葬儀社のスタッフは勿論のこと、僧侶や神職などの宗教家、経験が豊富な親族、土地の世話役など、様々な方と話をする機会が出来るはずです。多くの方と話していく中で、信用できる方・安心して相談できる方の基準ができます。事前準備の段階であればより相性が合う方を探すことも可能ですからストレスの緩和につながります。
- これは相手方にも同じことが言え、突然来た方に相談をされるよりも、関係性を築いた方と接する方がより親身になることができます。葬儀の事前準備は、葬儀に関わる人との人間関係を構築するという意味でも有用です。
事前相談の内容の知識
葬儀の事前準備をする際に決めておきたいことは数多くあります。ここでは最も重要な点を絞ってご紹介していきます。
- 葬儀社選び
- 故人が亡くなってから葬儀社を選定すると、その葬儀社が自分たちに合った業者なのか・希望に沿った葬儀を執り行える業者なのかを判断する時間がありません。しかし、葬儀の事前準備をするのであれば、自分たちに合う葬儀社を前もって探す時間があります。
- 葬儀社を決める際には複数の葬儀社に話を聞き見積りをもらいながら比較検討することが大切です。その際に見積りに記載された金額だけでなく、提供される設備やサービス、担当者の対応なども検討材料に含めましょう。
- 担当者の人柄や相性は、納得のいく葬儀を行うためにとても重要な点です。性格的に合わない・違和感を感じる担当者と共に葬儀の準備をするのは意外にストレスの原因のひとつとなります。
- 葬儀形式の決定
- 葬儀の事前相談と聞いて一番最初に浮かぶのが「どのような葬儀にしたいか」という点ではないでしょうか。
- 宗教色が強いものにするのか無宗教に近いものにするのか、一般葬にするのか家族葬にするのか、一日葬にするのか直葬にするのかなど様々な葬儀形式から自分の希望に近い形式を決めます。
- 会場の規模に影響しますから、親族や親しい人限定の葬儀にするのか、一般の人も受け入れるのかも決めておきましょう。
- 葬儀社の方でも様々なプランを用意していますが、あらかじめ自分の希望となるビジョンをある程度決めてから葬儀社に行くとよりスムーズに対応を受けられます。
- 喪主の決定
- 葬儀には喪主が必要ですが、喪主を決めるのに法的な決まりはありません。
- 通常は遺族間で相談し、喪主となる方を決める事になるのですが一般的または慣習的な優先順位というものがあります。優先順位が1番高いのは「故人の配偶者」です。もし故人に配偶者がいればその人が喪主の第1候補者となります。
- しかし配偶者が何らかの事情で喪主となることが難しい場合は、別の人が喪主をすることになります。2番目の喪主候補者は「故人の長男」であることが多いです。長男の上に長女がいる場合であっても従来は男性の方が喪主を務めることが多かったようですが、近年では年齢順に長女が喪主を務めるケースも多く見受けられます。
- 次女や次男が故人と生活を共にしていた場合などは次女や次男が喪主になることもあります。
- また、長女の夫(故人にとっての義理の息子)が喪主を務めるケースもあるようです。
- また、故人に配偶者も子どももいない場合は故人の父親で、父親がいない場合は母親が喪主になります。
- 故人に配偶者も子どもも親もいない場合、故人の兄弟姉妹が喪主を務めます。
- 以上の人がすべていない場合、親族で話し合って決めることになります。故人の親族などが務めるケースが考えられます。
- そういった人がいない場合、故人と生前関わりが深かった人が喪主を務めます。
- ただしこれらは一般的な例であり、実際には家庭の事情や家族の考え方、地域の習わしなどで決定されます。
- 訃報連絡先のリスト
- 故人が親しい人は、案外遺族にはわからないものです。そこで、万が一のことがあったときの為に訃報を伝える人を一覧にしたリストを作っておくことをおすすめします。
- 顔を知っていても連絡先がわからなかったり、存在自体が知らなかったということは珍しくありません。
- また「訃報の連絡のみする人」と「葬儀に参列してくれるよう頼む人」にわけておくのも一案です。
- 遺影の選定
- 遺影写真の選定には予想外に時間と手間がかかります。遺影はできるだけ故人の人柄が分かる表情のもので、最近のものであることが望ましいです。できれば希望の写真を選んでおくか、遺影用の写真を撮りに行くことをおすすめします。
いかがでしょうか。上記に挙げた内容はごく一般的かつ代表的な事柄のみです。実際に葬儀を執り行うとなると上記の内容に加え、お別れの時間に流す音楽・花祭壇の種類・返礼品の選定・葬儀の日程や場所の連絡・各種手続きなどなど…遺族の方が行わなければならないことが次々と迫ってきます。
大切な方が亡くなってから葬儀のことを決めるよりも、事前準備で様々なことを具体的に決めておくことで残された家族の方の負担が大幅に少なくまります。また、それだけでなくご本人様やご家族の希望に沿った「その人らしい葬儀」を執り行う事も可能になります。
葬儀式場の種類の知識
葬儀を行う場所は主に以下の種類に分けることができます。どの式場がご自身や故人様に向いているか知っておきましょう。まず始めに葬儀式場の種類やそれぞれの施設について詳しくご紹介していきます。
- 葬儀式場の種類や特徴
- 自宅
自宅で葬儀を行う場合には、祭壇を飾り棺を安置し参列できる広さの部屋があることや棺の出入り、霊柩車など必要な車両を止めるスペースがあるといった最低限の条件をクリアしていれば可能です。自宅での葬儀は式場利用料が発生しない為安価に葬儀を執り行うことができます。 - 自社斎場
葬儀社が運営する斎場を自社斎場と言います。自社斎場を利用する際にはその葬儀社に依頼するのが基本で、エリア内に複数自社斎場がある場合もあります。 - 寺院・教会
寺院や教会でも葬儀を行うことができます。しかし基本的には寺院の場合は檀家のみ、教会であれば信者の方でなければ利用できません。寺院葬によっては祭壇が必要なく、葬儀料金が抑えられる場合もあります。寺院・教会ならではの荘厳な雰囲気で葬儀ができるのが特徴ですが元来、葬儀を執り行うための施設ではないため、葬儀用の設備が整っていない場合があります。 - 公営斎場
公営斎場とは市区町村などの自治体やいくつかの自治体が共同で運営する施設のことで、運営元の自治体名がついている斎場が多いです。喪主か故人様が運営市区町村の住民であれば民営斎場に比べ料金が安いのが特徴です。利用希望者が多く予約が取りにくいという場合もあります。公営斎場には火葬場が併設されていますので、通夜・告別式・火葬までを一か所で終えられます。なお東京は公営の斎場に火葬場が併設されていなかったり、複数の区で共同運営している斎場があったり、23区内の民営火葬場には斎場も併設されているなど特殊性があります。 - 民営斎場
民営斎場とは主に企業宗教団体などが運営する斎場で、公営斎場より斎場数も多く予約が取りやすい傾向にあります。公営斎場に比べ葬儀料金は割高になります。斎場名は「○○セレモニーホール・○○会館」など多岐に渡り、自社斎場の場合は統一された斎場名であることが多いです。民営斎場はスペースとしての貸し出しのみを行っている貸し斎場と、葬儀社が自ら保有する斎場の二種類に分けられます。 - ホテル
ホテルも選択肢のひとつとして挙げられますが、ホテルには遺体を運び込めないことが多く火葬後に告別式の代わりとしてお別れ会や偲ぶ会を行う場所として取り扱われるのが一般的です。 - 集会所・公共施設
集会所や公共施設などでも葬儀を行うことが可能です。設備の利便性に欠ける傾向があります。
それぞれの施設の利点と欠点の知識
先にお伝えした葬儀式場の種類にはそれぞれ料金や設備面などに違いがあります。それぞれの利点と欠点を把握して適した葬儀式場を検討しましょう。
- 葬儀式場の利点と欠点
- 自宅
利点:利用料金がかからない・時間的制約を受けない・慣れ親しんだ場所で故人を偲ぶことができる
欠点:葬儀を執り行う環境を整える必要がある・近隣の方々への配慮が必要・プライベート空間を参列者の方にさらすことになる - 自社斎場
利点:お葬式でよくある要望をおさえた設備が整っている・費用を抑えることが可能・柔軟な対応が可能な傾向にある
欠点:所有している葬儀社に葬儀を依頼する必要があり、葬儀社の選択肢が限られる - 寺院・教会
利点:寺院や教会ならではの荘厳な雰囲気で葬儀ができる・寺院や教会との関係性が維持できる
欠点:利用できる人に制限がある・設備面での利便性は低い・お布施を含めた使用料が高額になる場合がある - 公営斎場
利点:民営斎場に比べて料金が安価・火葬場併設の場合は霊柩車の手配が不要・宗教宗派が不問
欠点:利用希望者が多く予約が取りづらい・演出の制限がある - 民営斎場
利点:公営斎場と比べると設備が充実している・演出に柔軟に対応してもらえる
欠点:公営斎場より料金が高い・設備環境は斎場により差がある・所有している葬儀社に葬儀を依頼する必要があり、葬儀社の選択肢が限られる - ホテル
利点:宿泊設備やサービスの充実・交通アクセスが良く参列者が来場しやすい
欠点:火葬後でないと利用できない・線香を炊いたり焼香ができない場合が多い - 集会所・公共施設
利点:使用料金が安価・自宅よりも機能的に葬儀を行うことが可能
欠点:準備に労力がかかる・地域や近隣住民への配慮が必要・設備が不十分
葬儀式場の選び方の知識
それでは、葬儀式場を選ぶ際のポイントについて説明していきます。あらかじめ事前相談や内見に行くのも有効的な手段と言えますから、わからないことは葬儀場のスタッフに質問してください。葬儀場を選ぶ際のポイントとして「利用料金・設備の充実度・斎場と葬儀の規模・交通アクセス・宿泊」が挙げられます。それではそれぞれ詳しくみていきましょう。
まずは利用料金ですが、いくつかの葬儀場を比較し、葬儀の規模や内容にあった料金の葬儀場を選びましょう。葬儀場の利用料金は公営斎場か民営斎場かで大きく異なります。葬儀の規模やスタイルによって、家族葬・一日葬・一般葬などと呼び方が変わり料金も異なります。希望内容によってはオプションにより料金が前後する場合もあります。葬儀社のスタッフと相談しいくつかの葬儀場を比較して希望にあった葬儀場を選びましょう。次に設備の充実度ですが、設備を確認し遺族の方・参列者の方どちらも利用しやすい葬儀場が理想です。設備の充実度は斎場によって差がありますので葬儀場を選ぶ際に確認しておきたいポイントのひとつです。それぞれの葬儀場の特徴を把握した上で希望の葬儀ができるか検討しましょう。また、葬儀中は何かと身体的・精神的負担が大きいですから葬儀中に過ごす控室はできるだけ快適そうな部屋があると良いでしょう。斎場と葬儀の規模については想定する参列人数に適した葬儀場を選びましょう。葬儀を行う場合はまず参列者の人数を検討し参列人数に対応できる葬儀場を選択します。広すぎる会場は寂しい印象を与えてしまいますし、思ったより葬儀場が狭かったという場合もあるようです。葬儀規模に合わせた葬儀式場かどうか確認することも大切です。交通アクセスについては、最寄り駅やバス停からの距離や駐車場の有無も重要です。また、民営斎場の場合は火葬場までの距離も検討したほうが良いでしょう。地域によっては自家用車の所有率や交通利便性も異なりますから車を多く使用する地域では駐車場の有無も確認します。宿泊が可能かどうかについては宿泊を検討している場合は葬儀式場で宿泊できるかを確認します。また、近隣の宿泊施設も併せて確認しておくと良いでしょう。
最後に葬儀社と斎場はどちらを先に選ぶと良いのかという点をお伝え致します。結論からお伝えしますと、まずは葬儀社を選んだ方がよいです。自社斎場を含め、その斎場に精通している葬儀社を選ぶということが最も重要です。斎場の場所は日程などの諸事情によって、別の場所に変更せざるを得なくなることが起こりえます。そのような場合地域の事情に精通しどのような斎場があるか把握している葬儀社であれば混乱なく対応することが可能です。希望の斎場が確定している場合もしくは特定の地域のみで葬儀を行いたい場合は、斎場を決めた上でその斎場で葬儀を行なっている葬儀社を選択するというのも良いでしょう。また、いくつかの葬儀場を比較したい場合はひとつの葬儀場での話を鵜呑みにするのではなく、葬儀場を利用した人から話を聞いたりインターネットの口コミを見るなど客観的な意見を参考にすると良いでしょう。