仏壇と納骨堂の知識
近年の核家族化や埋葬に関する価値観の多様化などにより、先祖代々の墓という従来の概念にとらわれず様々なお墓の形式が注目されています。納骨堂とは「遺骨を納めるための収蔵スペースを備えた建物」である事が多く、近年注目されているお墓の形式のひとつです。また、かつては多くの家庭に仏間があり、仏壇を置く場所を決めるのに悩むことはありませんでした。しかし近年では住宅環境も多様化していますので仏間だけでなく和室も設置されていないケースが増えてきていますから、仏壇を一体何処に置いて良いのか分からずに困っている方も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、仏壇と納骨堂の知識について詳しくお伝え致します。
納骨堂の知識
お墓というと屋外に立ち並んだ墓石や墓地を想像することが多いかと思いますが、お墓の種類はそれだけではありません。お墓は大きく分けて四種類に大別され、その内の一種が納骨堂です。
納骨堂は主に建物の中などに個人やご家族でご遺骨を納められる施設になります。元来、納骨堂というものは墓石へ納骨するまでの間、お寺などで骨壺を預かる「預骨」のための施設でしたが、現在ではお墓の代わりとして利用したいという要望が増えてきたことから現在のような形式に変化していきました。納骨堂の多くが継承を前提としない「永代供養」のお墓であり、寺院の敷地内などに設置されます。しかし、永代と言っても個別に納骨される期間が決まっているのが一般的ですので注意が必要です。それぞれの納骨堂の契約やサービスの内容によっても変わりますので一概には言えませんが、契約期間が終わった時点もしくは継承者が不在となった時点で合祀墓にご遺骨を移し供養を続けるというケースが多いようです。また、期限終了時に更新料を支払うことで期間を延長できる場合もあります。納骨堂は同じ敷地内に多くのご遺骨が納められているため、一般的なお墓を購入するよりも比較的費用が安く済む場合が多いという点も特徴のひとつです。区画単位で購入するのが一般的で、「個人用・家族用・夫婦用」などといったように、納めるご遺骨の数によって料金が異なります。
納骨堂の種類の知識
納骨堂には多種多様なタイプがあり、具体的には以下のようなタイプがあります。
- 納骨堂のタイプ
- ロッカー型
鍵がかけられるロッカー形式の場所に骨壺を納める。 - 仏壇型
一区画のスペースが広く、小型仏壇の下部に骨壺を納める。 - 自動搬送型
一ヶ所に集められた骨壺が、お参りスペースに自動搬送される。 - 位牌型
骨壺は一ヶ所に集められており、お参りは位牌に向かって行う。 - 神棚型
シンプルな棚上に骨壺を並べ、個別の仕切りがない。 - 墓石型
室内墓地とも呼ばれ屋内に並んだ墓石の下部に骨壺を納める。 - 合葬・合祀型
屋内外にある永代供養塔の中に骨壺を並べる。
中でもロッカー型・仏壇型・自動搬送型・位牌型が主流とされていますので、この四つのタイプについて更に詳しくお伝えしていきます。
まずは「ロッカー型の納骨堂」ですが、手前に花などを供える簡易のスペースを設けている形式もあれば、遺骨を取り出し共有の礼拝スペースを設けている形式もあります。使用するスペースの広さや利用年数などによって価格は変わってきますが、相場としては20万~50万円程度とされ、基本的に一体から数体分の骨壺が収められるくらいの大きさが主流で、納骨堂の中では比較的安価な部類となります。
続いて「仏壇型の納骨堂」ですが、よくある仏壇型の納骨堂の形状は扉が二段に分かれていて、上段が仏壇スペース・下段が納骨スペースになっています。上段の扉を開くと宮殿があり、本尊や位牌に向かってその場で礼拝することが可能です。地域によっても価格帯は異なりますが相場としては50万~200万円程度とされ、1人用、2人用、家族用などと様々なタイプがあります。納骨壇全体のスペースの広さや上段の仏壇スペースのしつらえの豪華さなどによっても価格が異なります。
次に「自動搬送型の納骨堂」ですが、自動搬送型納骨堂はビル全体が納骨堂となっていて、普段はバックヤード保管されている骨壺をお墓参りの度にコンピューター制御によって参拝スペースへと運ばれるシムテムです。お参りを行う参拝スペースには共用の墓碑が据え付けられており、一般的な墓石に向かってお墓参りをしているような感覚で参拝することができるというのが特徴です。ICカードなどをかざすことで、該当するご家族の遺骨が自動で参拝スペースの墓碑まで運搬されセットされます。「ビル型納骨堂・エレベーター型納骨堂・マンション型納骨堂・自動搬送式納骨堂」などとも呼ばれています。自動搬送型の納骨堂は近年急増している先進的なお墓でコンピューターによる制御システムと、スタイリッシュな内装や外観で充実した設備が特徴的です。相場としては80万~200万円程度とされ、使用する体数分によって価格は変化します。
最期に「位牌型の納骨堂」ですが、ひな壇状になっている棚にご遺骨や位牌を並べる形式の納骨堂です。お参りは共用の礼拝スペースやご本尊に向かって行います。ロッカー型や仏壇型と比較すると個別の占有スペースが少ない傾向にある為、納骨堂としては最も安価といえる形式です。相場としては10万~20万円程度とされ、安価なタイプであれば骨壺ではなくご遺骨の一部のみを収蔵し一つ一つのこじんまりとした位牌がずらっと並びます。位牌ではなく小さな仏像の中に遺骨を収蔵するというタイプもあります。
納骨堂に向いてる方の知識
近年、納骨堂の数が増えてきている背景には「少子高齢化・核家族化・都会への人口集中」などの社会問題の変化によって人々の供養に対する考え方が変化してきたことが挙げられます。このような意識は変化してきており、手間がかからず安価な納骨堂が人気になってきてると考えられます。納骨堂は現代の方のニーズやのライフスタイルに合っていることから人気が高まっている供養方法です。納骨堂の特徴を踏まえ、終の住処として納骨堂が合うであろう人の特徴をご紹介します。
- 納骨堂に向いてる方
- お墓の後継者がいない方
- お墓の後継を任せるか悩んでいる方
- 自分だけ、もしくは夫婦だけのお墓に入りたい方
- 頻繁にお墓参りをしたい方
- 費用は掛けられないが、供養はしっかりしたいという方
- 今あるお墓を墓じまいしたい方
このように、供養をどのように行ったらいいか悩んでいる方にとって納骨堂は一つの解決策となっています。もし自分の悩みに当てはまるものがあれば、納骨堂の検討を進めてみても良いかもしれません。
仏壇の向きの知識
一般的に、北向きにお仏壇を向けてはいけないとされていますが、これは昔の家の作りによる考えから言われている説です。お仏壇は直射日光が当たらず風通しの良い場所である家の中で最適な場所に置くのが良いとされている為に北向きは良くないとされてきました。しかし、仏様は十方どの方角にもいらっしゃるとされていますので、お仏壇はどの方角に置いても良いのです。基本となる向きについての諸説について以下で説明しますので仏壇を置く場所を決める際の参考にしてください。
- 南面北座説
- 南面北座説は古代中国の慣習から来ています。王などや位の高い人物は南を向いて座り、家来は北を向いて座る習慣があったのです。これが日本においても伝わり、敬うべき人は南向きに座るのが一般的になり、敬う対象である仏さまを祀る仏壇も南向きに置く考え方が広がりました。また、お釈迦様が説法をする際に南向きに座っていたという説があることも加わり、南向きが良いとされるようになったのが南面北座説です。
- 東面西座説(西方浄土説・極楽浄土説)
- 東面西座説はインドの慣習から来ています。日が昇る東側は立身出世の象徴とされる縁起の良い方角とされ、主人は東向きに座ると良いとされた説を日本が取り入れたものです。また、人の悩みがない極楽の世界は西方浄土とも呼ばれ、西の方角にあると信じられています。極楽のある西の方角を向いて祈る為に仏壇を東側に置くという由来もあり、この考え方は西方浄土説や極楽浄土説といわれてます。
- 本山中心説
- 仏壇を置く方角をはじめから決めないのが本山中心説です。その名の通り本山がある方角に向けて仏壇を置く考え方で、住む場所によって仏壇が東向き・西向き・南向きにもなります。
- 十方浄土
- 十方浄土とは、東西南北・北西・南西・南東・北東・上下を合わせた十の方角つまり全世界を表しています。全ての法則は理を持っているという宇宙の心理・法則・道理によるもので、東西南北上下左右に良し悪しをつけてはいけないという釈迦の説法から来ています。お仏壇を置く場所にこだわらず、ご先祖様が安らかにいられる場所が良いとしています。
- 春夏秋冬説
- 春夏秋冬説は東西南北を四季に捉えたもので、風水にも似た説になります。東は万物のはじまりとされる春とし、南は実を結ぶ夏、西は収穫をする秋、北はそれを納める冬としています。春夏秋冬説でも仏壇はどの方角に置いても問題はありませんが、最も選ばれやすいのは東向きあるいは南向きとされています。
- 床の間説
- 床の間は家の中の上座に当たる為、崇拝するご先祖様をお祀りするには最適の場所とされているのが床の間説です。
宗派ごとの仏壇の向きの知識
基本となる向きについての諸説に加えて、宗派によってお勧めしているお仏壇の向きや方角があります。ここからは主な宗派に関してお伝え致します。
- 浄土宗・浄土真宗・天台宗
- こちらの三つの宗派では仏壇を東向きに置くことが良いとされています。ご本尊として阿弥陀如来を祀っており、阿弥陀如来は西方浄土(西側)にいるとされていることから、その方角に向かって祈るよう東面西座説である東向きが良いとされています。
- 真言宗
- 真言宗では、本山中心説が良いとされていますので、拝む方向の延長線上に本山のある和歌山県にある高野山金剛峯寺に向かって仏壇を置いています。
- 日蓮宗
- 日蓮宗では、仏壇を置く場所に決まった方角がなく、置く場所は気にせず自由に置いて問題ないとされています。
- 臨済宗・曹洞宗
- 曹洞宗や臨済宗では、南向きに置く南面北座説を勧めています。お釈迦様が説法をする際に南向きに座っていたと言われている説が関係しています。
無宗教の方の場合で仏壇を置く向きが気になるという方は、十方浄土あるいは春夏秋冬説を参考にすると取り入れやすいかと思いますのでお勧め致します。
仏壇を置くのに適した場所の知識
お仏壇は神棚と違い、明確な決まりごとはありませんがお勧めする置き場所があります。大切なご先祖様を納めているお仏壇ですので避けた方が良い場所を気にして決める、もしくはご先祖様が喜ばれると思う場所を感謝の気持ちを込めて選ぶと良いでしょう。何よりも大切にしたいのはお参りとお手入れのし易い場所に置くことです。ここからは仏壇を置くのに適した場所についてお伝え致します。
仏壇の置き場所として、一般的にお勧めされている場所としてまず挙げられるのが「仏間」です。仏間はお仏壇を置く専用の場所となりますのでお仏壇を置く場所としては一番お勧めの場所となります。しかし近年では仏間を設置している家が少なくなってきている傾向にありますから、以下でお伝えする場所も参考にしてください。
- 床の間
- 床の間は和室にある上座の床を一段高くして作られた場所です。本来は花や掛け軸などを飾りますが仏壇を置くスペースにも適していますので、基本的にどの宗派でも問題はありません。床の間のある部屋は風通りが良くなるように設計されており、仏壇が劣化する原因となる直射日光も避けることができます。この様に部屋の作りから見ても床の間は仏壇を置く場所としても最適です。床の間に置くのは良くないという説もありますが床の間は家の中の上座とされている場所ですので、お仏壇を置く場所としては適している場所と言えます。
- 居間・リビング
- 居間やリビングはお仏壇を置く場所として馴染みがないかもしれませんが、現代の家の事情を考慮した場合は人が多く集まる賑やか場所である居間やリビングも適した場所とされています。家族が集まる生活の中心スペースですので、いつも故人が見守ってくれる印象があります。仏間や床の間に置くような大型のものは難しい為ミニ仏壇を置く方が多いようです。
- 畳のある和室
- 畳のある居間や茶の間に仏壇を置く方も多くいらっしゃいます。家の中でも家族が集まりやすい場所でもある為、線香をあげたりお花を供えたりなど日々のお世話もしやすいところです。部屋が狭いマンションなどでは場所を選ばないコンパクトサイズの上置き型仏壇を利用する方も多く、タンスや押し入れの上部に設置することが多いようです。
仏壇はご本尊やご位牌を安置する場所であると同時に繊細な細工が施された工芸品でもある場合もあります。仏壇はそのほとんどが木製ですので仏壇の置き場所として避けたい場所がいくつかあります。
置き場所として一般的に避けた方が良い場所のひとつは、神棚がある場合に向かい合わせとなる場所もしくは神棚の真下が挙げられます。神棚と向かい合わせてにした場合には片方にお参りをしている間、片方には背を向けることになる為避けた方が良いとされています。また、神棚の真下にお仏壇を置いた場合には手を合わせた際にどちらに手を合わせているのか分かりづらくなる上、神棚に手を合わせている間お仏壇を見下ろす形になる為避けた方が良いとされています。次に床の間の向かいは下座となるため避けましょう。下座に置いてしまうことはすなわち足を向ける事になりますので注意が必要です。また、先にお伝えしたお仏壇の素材による理由から直射日光や多湿な場所に置くことは避けたい場所として挙げられます。木材が乾燥や湿気によるひび割れを発生しお仏壇そのものが壊れてしまうリスクに繋がったり、金箔や蝶貝などを装飾として使っている場合には直射日光や湿度に弱いため壊れてしまいますので注意が必要です。
また、仏壇を置く場所の他にもう一つ注意したいのがご本尊を置く高さです。座ってお参りする時にはご本尊の位置がお参りする人の目より少し上にくるように安置しましょう。また、立ってお参りする場合にはご本尊がお参りする人の胸よりも少し上にくる位置になるように安置して下さい。なお、近年ではお仏壇の素材も変わってきています。キッチンなどの湿度の高い場所にも置ける素材を使っているお仏壇もありますので、設置場所として直射日光が当たる場所や多湿な場所を予定されている場合にはお仏壇を購入される際にご相談されることをお勧め致します。