火葬式と納骨の知識
火葬式(直送)とは通夜式や告別式などの儀式を省き、ごく親しい方数名で火葬のみを行う葬儀のことを指します。また、火葬式(直送)はまだ一般的な葬儀形式とはいえない為、納骨する方法や納骨を断られた場合の対処法について疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回の記事では、火葬式と納骨の知識を詳しくご紹介致します。
火葬式の知識
火葬式(直送)※以下火葬式とします※とは一般的な葬儀と異なり、亡くなった後ご遺体を安置してから出棺、火葬場へ移動して火葬を行う最もシンプルで小さな葬儀形式です。一般的な葬儀では、一日目に通夜式、二日目に告別式と火葬を参列者を招いて行います。法律によってご遺体は死後24時間以内は火葬をしてはいけないと決められている為に火葬式でも安置は必要です。
近年では葬儀に対する考え方や価値観も多様化してきています。亡くなったらお葬式をして故人を見送るという一連の儀式が一般的ですが、これといった決まりがない分、正解はないとも言えます。法律上のお話をすると葬儀をしないといけないという法律はありません。ですが「墓地、埋葬等に関する法律」によって埋葬(土葬)と火葬は必ずしなければならないと定められています。
火葬式の流れの知識
ここからはご臨終から火葬式の手配や終了までの一連の流れをご紹介致します。
- 火葬式の流れ
- ・臨終・お迎え(搬送)
病院から死亡診断書を発行してもらったら葬儀会社に連絡をします。葬儀会社の手配により寝台車が安置場所までご遺体を搬送します。 - ・ご遺体の安置
法律により亡くなってから24時間は火葬ができません。安置場所となるご自宅または葬儀会社や火葬場の霊安室など専用の安置施設にご遺体を安置します。 - ・葬儀会社との打ち合わせ
葬儀社スタッフと火葬場や僧侶などの手配等の打ち合わせを行います。葬儀会社は、役所に死亡届(死体検案書)を提出し、火葬許可書の申請など火葬に必要となる手続きを代行します。 - ・納棺
故人の旅立ちの身支度を整え、棺へ納めます。納棺の際にはお別れ花を献花し、故人の好きだったものなども一緒に納めることができます。 - ・お別れ
火葬場に到着したら火葬許可書を提出し、炉前にて故人との最後のお別れを行います。 - ・出棺、火葬
最後のお別れの後、お棺のふたをしめ火葬が始まります。火葬炉によりますが火葬は概ね一時間程度で終わるまで控室で待機します。 - ・拾骨、散会
火葬後に、係員の指示に従って遺骨を骨壷に納めます。火葬場では骨箱のほかにお墓に遺骨を埋葬するために必要な「埋葬許可証」が渡されますので確認して受取ります。一連の手続きを済ませて散会となります。
一般的な葬儀の流れとの大きな違いは、火葬式には納棺の後に葬儀のメインとも言える通夜式や告別式がないということです。また火葬や収骨後に食事を集まってとる必要もなく、時間・値段ともに大幅に簡略化しているといえます。
火葬式の利点や欠点の知識
火葬式を選択した場合に支障をきたしがちなのが「周囲の理解」です。従来の葬儀形式は通夜式や告別式を執り行うのが一般的であり未だお葬式というとそういった従来のイメージを持っている方が多いです。以下に火葬式の利点と欠点を下記にまとめましたので参考にしてください。
- 火葬式の利点
- ・参列者への対応が不要
火葬式は一般的にご家族や身近な方のみ少人数で行うため、大勢の参列者への挨拶や受付係の手配などが必要ありません。その為、香典を頂いた方への香典返しや手伝っていただいた方への挨拶回りなど、葬儀後の対応も最小限で済みます。 - ・費用を抑えられる
火葬式が選ばれる一番の利点であるのが費用面の問題です。一般的な葬儀で行われる通夜式や告別式を行わない為、他の葬儀形式と比較すると経済的な負担を抑えることができます。
- 火葬式の欠点
- ・参列を希望される方への配慮が必要
火葬式は一般的にご家族や身近な方のみ少人数で行うため、参列できなかったことを悔やまれる方がいる可能性が高くなります。葬儀後に弔問の機会を設けるなどの対応を検討する必要があります。 - ・周囲の理解を得る必要がある
先にもお伝えした通り、火葬式は多くの方がイメージされる一般的な葬儀とは異なります。そのため、後々のトラブルを防ぐ為にも周囲の方に対して火葬式を行う旨をしっかりと伝え、理解を得ておく必要があります。 - ・納骨できない可能性がある
一般的に、お付き合いのある菩提寺がある場合はその寺の考えのもとに葬儀を行い、火葬後は菩提寺へ納骨することになります。火葬式を行うことを事前に伝え理解を得ておかないと、宗教的儀式を省いた葬儀を執り行ったことにより関係を損なう可能性や場合によっては菩提寺への納骨を断られる場合もありますので、事前によく相談しておく必要があります。
また、上記以外にも通夜や告別式を行わないためにどうしてもお別れの時間が短くなってしまい、十分なお別れの時間がなかった・見送った実感がないといった感情を抱くこともあり、後々後悔するケースもあります。火葬のみの火葬式を行う場合は、どのような葬儀にしたいのかを具体的に考え、火葬式でのお別れや供養がご自身やご家族にとって十分だと納得できてから決定する必要があります。これに加え死後24時間以上経過しないと火葬が行えないと法律上定められています。この為ご遺体を最低でも一日以上は安置する必要があり、火葬式の場合は火葬場の空き状況によって数日待つ場合もあり、その間ご遺体を保管する場所を事前に考えておく必要があります。
なお、親族や故人様の親しかった方のみで行うお葬式を「密葬」や「家族葬」と言いますが、これらはお通夜・告別式を行いますので火葬式とは別のものとして区別されています。
火葬式と納骨の知識
墓地、埋葬等に関する法律によって「死後24時間以内は火葬をしてはいけない」と定められています。その為、ご臨終後は遺体を安置することは必須ですから、自宅での安置が困難な場合は葬儀社等の安置室で安置をすることになります。安置した後は納棺・出棺をします。火葬式の場合は通夜や告別式を執り行いませんが、納棺の際には故人が生前好きだったものや花などを一緒に納めます。納棺が終了したら出棺をし火葬されます。納骨は後日となるため、火葬終了後に骨上げをしたら火葬式は終了となります。骨上げは収骨とも呼ばれ、骨を骨壺へと収める儀式のことです。納骨の際に必要となる埋葬許可証は、火葬終了後に火葬場スタッフか葬儀社から受け取りますので、忘れずに受け取りしっかりと保管しておきましょう。
納骨ができない場合の知識
火葬式をする方にとって最も不安に感じるのが、確実に納骨できるのかどうかという点ではないでしょうか。実際に火葬式の場合は納骨を断られる可能性があります。火葬式が菩提寺と関係のないところで執り行われるからです。通常であれば通夜や告別式などで僧侶が読経をしますが、火葬式の場合は通夜も告別式もなく火葬のみが執り行われるため一般的には宗教儀式が執り行われません。その為、宗教観を大事にする菩提寺の僧侶によっては火葬式を快く思わない場合もあります。菩提寺に納骨を断られるリスクは火葬式の最大のデメリットといえるでしょう。このように納骨を断られるケースもある為、火葬式を予定している方は事前に菩提寺に相談するのがおすすめです。宗教的儀式を執り行わない火葬式は、付き合いのあった菩提寺とは関係ないところで進みますから、何も相談せず執り行ったあとに納骨したい旨を申し出ても快く思われないかもしれません。トラブルを避ける為にも事前に火葬式を検討しているという旨やその理由を正直に話しましょう。
この様に火葬式では菩提寺に納骨を断られるリスクがありますが、故人の意向や金銭面の問題などどうしても火葬式にする事情がある場合も考えられます。どうにかして納骨してもらいたいという方も多くいらっしゃると思います。ここからは、火葬式を執り行った際に納骨する方法をお伝え致します。
まずひとつめに戒名だけ菩提寺にお願いするという方法があります。戒名だけを菩提寺に依頼すると菩提寺とのつながりが生まれるため、火葬式であっても納骨を受け入れてもらいやすくなる傾向にあります。戒名を依頼する場合は、葬儀を終えた後に相談しても断られる恐れがあるので基本的には火葬式を執り行う前に相談します。その際はお布施を用意が必要ですので事前に確認しておきましょう。ふたつめは菩提寺に四十九日法要をお願いするという方法です。火葬式であっても、四十九日法要を依頼することで納骨を受け入れてもらえる可能性が上がります。四十九日法要は、故人が極楽浄土にいけるかどうかが決まるとされる日に僧侶に読経をしてもらう儀式です。一般的に四十九日法要と同じタイミングで納骨が行われることも多い傾向にありますし、事前に四十九日法要の相談をしておくことで菩提寺とのつながりを維持できます。火葬式では初七日法要は執り行われないのであわせて依頼をしてみるのも良いかもしれません。
納骨が出来ない場合の知識
先にお伝えした四十九日法要や初七日法要、戒名などを依頼しても結果的には納骨を断られる場合もあります。その際には自宅に保管するしかないと考えてしまうかもしれませんが、菩提寺に納骨するという事にこだわらなければ、他にも選択肢はあります。その選択肢とは公営墓地や納骨堂への納骨です。公営墓地とは、地方自治体などが管理する墓地のことで、使用料と管理料が比較的安価というメリットがありますが都市部ほど倍率が高く、抽選に外れてしまうこともありますので注意が必要です。納骨堂とは、建物の中で遺骨を安置してくれる室内型の墓地のことで、様々な形式があり公営墓地と同様に比較的安価で立地場所がアクセスが良い傾向がメリットといえます。
また、葬儀社に納骨ができるお寺を紹介してもらうというのもひとつの選択肢です。葬儀社は葬儀のプロフェッショナルですから、多くの葬儀を執り行い知識を豊富に持っていますし、お寺との広いネットワークをもっています。火葬式であったとしても納骨を受け入れてくれるお寺を知っている可能性もあります。分からないことがあったらまずは葬儀社に相談してみてください。
必ず納骨しなければならないという定めはありません。納骨以外の供養として「散骨」や「自宅保管」という方法もあります。散骨とは、その名のとおり骨をまくことを指します。散骨というと海のイメージが強いかもしれませんが、「海」以外にも「空」「山」などがあります。近年では遺骨を取り付けたバルーンを成層圏まで飛ばし散骨する「宇宙」での散骨もあるそうです。基本的に散骨に際しての許可証は必要ありませんが、手続きで必要な書類は「死亡届」「死亡診断書」「火葬許可証」の三つですので確認しておきましょう。また、散骨をする際はルールやマナーを守ることが求められます。散骨が許されている場所は、私有地・公海上・管理された墓所のみとなり地域によっては散骨が禁止されている場所もあるのでお住まいの自治体に事前に確認をしましょう。散骨する際には遺骨を粉末状にし骨と分からないようにします。骨と分かる状態で散骨すると違法となる可能性があるので注意しましょう。近年では散骨事業者も増えてきていますから視野に入れると良いですね。また、自宅で遺骨を保管し「手元供養」とすることもできます。手元供養は、お墓を所有しない方を中心として近年広がりを見せている供養方法です。骨壺をお墓ではなく自宅で保管することで故人をよりいっそう身近に感じられます。お骨の一部をペンダントなどに入れて常に持ち歩くこともでき、宗教や様式にとらわれず供養ができます。手元供養は定期的なお墓参りが難しい方、諸事情でお墓を所有できない方、故人を身近に感じたい方などにおすすめです。